オオハシコニコです。
飼い主さんに犬と猫の手作り食の話をするとき、特に犬は肉食よりの雑食なので、多少の増減はあっても野菜を肉と同じくらいの量食べてもいいですよー、とお伝えします。
たいていそれでみなさん思い思いのごはんを作ってくれるのです、が。
たまに、ベジタリアン?と思うくらいお野菜大好きな飼い主さんが、こちらが驚くくらいの量の野菜をあげていることがあります。
しかも「生きた酵素をあげたい!」ということでがっつり生野菜であげていることもあります。
生きた酵素がどうとかよりも、残念ながら犬は生野菜をうまく消化することがとても苦手です。
それを踏まえたうえで、実際の症例と合わせて野菜と犬についてお話します。
①症例その1:おなかいっぱい草を食べてみたポインターくん → 開腹手術
外に行くと草を食べるのが大好き~、というポインターくん。
ある日、よっぽど好みだったのか、そういう気分だったのかわかりませんが、飼い主さんがお友達と立ち話をしている 30分間ずっと草を食べ続けていたそうです。
その日の夜、ひどい水のような下痢と、何も出てこないけどげえげえ吐いていると連れてこられました。
一目でびっくりのお腹ぱんぱんの状態。
エコーやレントゲンで確認すると、胃がなにかでいっぱいでぱんぱん、そしてたくさんのガスが溜まってしまう急性胃拡張でした。
とりあえず緊急処置でガスを抜いたあと、手術でおなかを開け胃のなかを確認すると、ヤギもびっくり!の大量の草草草…草だらけ。
一度に草を食べすぎたため、胃の中で消化運動がおこったときに発生したガスと草で胃が限界まで広がりすぎてしまい、どうにも消化ができなくなってしまったようです。
幸いすぐに処置したため草をきれいに取り除き元気になりましたが、もっと時間が経っていたら胃の壊死した部分を切除しなくてはいけませんでした。
②症例その2:えのきとごぼうを食べ続けたチワワちゃん → 浣腸処置
すごく小さい1キロちょっとのチワワちゃんに手作り食を実践していた飼い主さん。
お鍋仕立てにして、色々なものをバランスよく食べさせていました。
あるときからやや便秘気味になったため、それを解消するためにえのきとごぼうを炊き込んだごはんを作ってあげてみました。しかし、よくなるどころかまったく便が出ない状態になってしまいました。
レントゲンで確認すると、何かが腸にひっかかっています。これにより、イレウスという消化管がうまく動けなくなってしまう状態になってしまったのです。
お腹の力を抜いてもらうため、鎮静と鎮痛の処置をして、何度もおしりからチューブと浣腸液を入れては柔らかくした便を出すことを繰り返し、ようやく出てきたのは束になっているほぼそのままの状態のえのき、どうやらこれが最初にひっかかり、その後のえのきやごぼうが次々そこでつまってしまったようなのです。
この処置で元気になってくれたチワワちゃんですが、しばらくは下痢や腹痛の治療をしなくてはいけませんでした。
③じゃあ野菜が大好きでも、犬にあげたらだめなの?
野菜が大好きなわんちゃんは多いですね。
ミニトマトやキュウリ、レタスやキャベツなんかが台所で落ちてくるのを待っているとよくききます。
何か病気で、治療として食事指導を受けている、処方食を食べているコは獣医師に相談が必要です。しかし、そういったことのない基本的に健康なコであれば、野菜のあげ方を間違えなければあげても問題はおこりません。
間違えた野菜のあげ方とは
- 量が多すぎる → 基本的に犬は生野菜の消化が苦手です、サラダレベルの量は避けましょう
- 形が大きすぎる → 丸呑みが基本の犬なので、のどに詰まらせることのないサイズにして与えましょう。おすすめは小さくカットではなく薄くカットです(みじん切りでなく薄切り)
- あげてはいけない野菜をあげている → 玉ねぎ、香味野菜が有名です。また人が生で多く食べる習慣のない野菜(イモや大根、ブロッコリーやごぼう)は加熱することをとくにおすすめします
いくら体にいいものでも、与える方法や量を誤ると、やはり害になります。
ヒトでも、ダイエット目的で大量摂取した白滝とかえのきのせいで、腸閉塞になる若い女性がいるそうです。
④野菜ジュースやスープなら、犬にあげてもいいの?
あげていいものもあるでしょうし、だめなものもあると思います。
ただ、犬は人の子どもがそうであるように、水よりおいしい液体があることがわかってしますとなかなか水を飲まなくなってしまいます。
そういった意味であまりおすすめはしていません。
⑤結局犬に野菜をあげる必要はないということ?
ドッグフードは、水とそれだけで犬の健康が保つことができるよう、年齢やステージに合わせて作られたものです。
つまり、総合栄養食であるドッグフードを決まった量食べられている犬には、野菜をあげる必要はありません。
でも、私たちもおやつは体にとっては不必要でも、楽しい毎日のため心に必要ですね。
せっかくともに暮らしている家族であるわんちゃん、正しいあげ方であれば野菜を避ける必要はありません。
本日は以上です。