9月になりましたが今日も本当に暑い日中でした。
何度も何度も言ってうるさくて恐縮ですが、お散歩やお出かけの際は熱中症に気をつけてくださいね。
さて、最近私が手作り食も含め食事のことについて色々と小ネタを持っていることに気付かれた飼い主さんたちが、実に様々なことをきいてこられます。
どれも私なりに真摯にお答えしているのですが、その中で最近気がついたことにあります。それは飼い主さんは
と思っている方がいらっしゃるらしいということです。
果たしてそれは本当でしょうか?
獣医師で、ペット食育指導士で、ペット栄養管理士で、ペットフード販売士でもある私の個人的見解としては
どんなペットフードでも治らなかったものが手作りにしたら急に治った!みたいな夢のようなイメージを持つ方もいらっしゃいますが、そうそう起きることではありません。
例えば私たち人間は、普段そういった手作り食なものを食べていることが多いはずです。
しかし「これだけ食べていれば栄養は完璧!」とうたわれる完全食に人気が集まる、手作りのメリットよりも手軽で栄養を損なわない完全食(ペットフード人版)のメリットを選ぶ人がいるという事実があります。
ペットがかかる病気のうち、一般的な手作り食でよい反応が出やすいものというものはあります。
それがどんなものなのか、とくにこんなものがいいのかもしれませんという例を挙げつつ解説していきます。
よかったら読んでみてください。
病気は3つに分けられます
色々な病気がありますが、手作り食という側面から行くと大きく三つに分けられます。
- 食事で治りやすいもの
- 食事で治ることもあるもの
- 食事で治らないもの
食事で治りやすいもの
ここの病気は、その症状に食事が関係している可能性がとても高いという特徴をもちます。
体に入った食事は消化管で吸収されエネルギーになっていくため、消化機能の異常というのは手作り食の反応が非常に出やすいものになります。
また最近の犬や猫は皮膚のトラブルを抱えていることが多いのですが、昔と違い環境の衛生面の悪さから寄生虫や細菌に感染するただの感染症というものは少なく、圧倒的にアトピー体質やアレルギー体質によるものが多くなっています。これもその体質にあった食事を見つけることができれば、良好にかゆみをコントロールする助けとなることがあります。
また消化器も皮膚もそれの代謝に非常に大きな水分を使うため、水分を多く含む手作り食は比較的反応が現れやすいと言えるのではないでしょうか。
実際手作り食やいくつかの食材をとりいれていただくことで、みるみるよくなる動物をみるのはとてもうれしいことです。
食事で治ることもあるもの(進行が抑えられる、改善がみられるもの)
ここの病気は、症状の一部が食事に関係している可能性が高いと言えます。
例えば腎臓や膀胱などのおしっこに関する泌尿器系のトラブル、または肝臓や胆のうなど消化器のうち胆肝に関係するものというのは手作りご飯がちょうど合っていれば改善することもあるかもしれません。
なぜならば腎臓や泌尿器というのは体の水分を非常に多く使うところです。強制的に水分を入れることで改善を試みる透析や点滴というものが治療のひとつに挙げられるほどです。また胆嚢や肝臓というのは、中毒を除けば何をしたら急に悪くなるというものではなく日々生活がそのまま反映されやすい臓器です。
十分な水分をとり、よけいなものを排出する機能が弱っていることを考慮したごはんを食べることが、全体的な改善につながることはありえることです。
食事で治らないもの(改善や軽快することが見込みにくいもの)
代表的なものに骨や筋肉、腱などに対する整形外科的なトラブルが挙げられます。
またてんかん発作や震え痛みなど神経系に関するもの、息が苦しい、動機や息切れなどの気管や心臓のトラブルも食事の結果がなかなか反映されづらい治りにくいものと言えます。
考えてみれば当たり前のことのようですが、骨が折れたままなのに一生懸命ご飯を食べさせたとしても、骨がぐらぐらと動き続ければくっつく暇がないですし、ついたとしても変なふうに曲がってもとのようには戻れないでしょう。骨折の痛みは骨膜(骨の表面)がこすれる痛みからくるので、安定した固定がなければいつまでも痛いまま、食欲もなかなかわきづらいでしょう。
という意見もあるでしょう。
確かにそのうちは治るかもしれません、しかし今までのように元気に不自由なく体を動かせるようになるかはまた別問題です。
整形外科は治ればいいものではなく、いかにその前の状態に戻してあげるかということを目標に日々診察手術を行っております。
同列に並べられてしまっては困るものです。
神経や呼吸状態が悪化しているときは、安全にごはんを食べることができません(飲み込むときは息止まりますよね)。水分のとりすぎも脳圧や心臓の負荷を高める可能性があるため、制限したほうがい場合もあります。
もちろんそうだと思います。
しかし、今それにこだわっていては、最悪「そのうち」を迎えることができないかもしれません。
一度ごはんを食べさせない期間を設けることが、ベストな治療になることもあります。
「ごはんで治す!」一つの考えに固執せず、信頼のできる獣医師と相談し、そのこのその状態に合った治療法に納得することができれば、一番いいことなのではないでしょうか。
愛するワンちゃんやネコちゃんが病気になったときは、とくに健康に気を使っていた飼い主さんほどショックが大きいように見受けられます。しかしペットのため、混乱した時は心を落ち着けて冷静に考えてみましょう。
そのこの病気は本当に食べ物で治るものなのでしょうか?
本日は以上です。