前の投稿で、犬猫の手作り食の必要性とメリットさらにはデメリット、最後にはその解消方法を整理しました。

でもこれで安心できない方、いらっしゃいませんか?
と不安になったりしませんか。
これけっこうよくいただく質問です。ペットの健康を飼い主として預かっている以上、健康上の問題が起こっているかどうかちゃんとわかるかな、って心配になるんですね。
なんて愛情深い…と心から感心しますし
と本気で思います。
そういうわけで、現役獣医師として自分で書いた手作り食の仕上げとして自らもし病気になるとしたらどんな感じかを解説しいたします。ぜひ最後までついてきてくださいね。
犬猫に手作り食を長年続けた場合に起こり得る病気
栄養性二次性上皮小体機能亢進症(NSHP)
ペットフードに比べ手作り食で最も多い違いが含まれるミネラル類の種類と量です。その中でも一番の栄養失調が カルシウム不足です。
とくにタンパク質強化で肉メインになるとリンが多くカルシウムがほとんど含まれないため、Caカルシルム:Pリン比が崩れ、慢性的な低カルシウム状態になります。
こうなると体は血中カルシウム濃度を維持するため、
骨を溶かしてカルシウムを取り出すいう緊急措置を行います。
これが長期間続くと、上皮小体(副甲状腺)が過剰に働き続け、「栄養性二次性上皮小体機能亢進症」が発症します。
栄養性二次性上皮小体機能亢進症の主な症状
– 骨密度の低下
– 骨の変形(脊椎・骨盤)
– 痛み・跛行
– 折れやすい骨(折りたたみ骨折)
– 成長期では重度の骨格異常
一部の研究では、手作り食を与えられた犬猫で 骨の透過性亢進・骨皮質の菲薄化が高頻度で確認されています。
Ca:P比を適正化すれば数ヶ月で改善していきますが、重度例では骨盤狭窄による巨大結腸症や脊椎変形が後遺症として残ることが20〜30%と報告されています。
亜鉛欠乏性皮膚炎
アレルギーやアトピーがあるという理由で手作り食に興味を持たれる飼い主さんは少なくありませんが、実は亜鉛が慢性的に不足しやすいことが多くの研究で示されています。
亜鉛は皮膚のターンオーバー・免疫機能・被毛の維持に不可欠ですが、肉や野菜だけでは必要量を満たすことが困難です。
亜鉛欠乏性皮膚炎の主な症状
– 目の周り・口周りの脱毛
– 皮膚の乾燥・フケ
– かさぶた・びらん
– 肉球の角化亢進
– 被毛のツヤ低下
ある研究では、手作り食レシピの83.5%で亜鉛不足が確認されています。
また韓国の市販手作り風フードでも 45.5%が亜鉛不足と報告されています。
亜鉛不足は皮膚症状だけでなく、免疫低下・創傷治癒の遅延・繁殖障害にもつながります。
タウリン欠乏症
タウリンは猫にとって必須アミノ酸であり、犬でも特に心臓のトラブルがあるこには欠かせない、健康に重要な栄養素です。
しかし、手作り食ではタウリンが不足しやすく、長期間続けると深刻な病気を引き起こします。
猫で起こる病気:拡張型心筋症(DCM)
タウリン不足は猫の 拡張型心筋症(DCM) の主要原因です。
心臓が拡大し、収縮力が低下し、最終的には心不全に至ります。
犬でも「食事関連性DCM」が増加
近年、犬でもBEG(Boutique・Exotic・Grain-free)ダイエットや手作り食でタウリン不足が起こり、DCMを発症するケース が報告されています。
タウリン不足が関連する拡張型心筋症の主な症状
– 運動不耐性
– 咳
– 呼吸困難
– 失神
– 心拡大(心エコーで確認)
食事変更とタウリン補給により、心機能が改善するケースが多いと報告されており、 早期発見であれば予後は良好ですが、進行例では命に関わります。
その他、長期の手作り食で起こり得る病気
ビタミンD欠乏症
– 骨軟化症
– 低カルシウム血症
– 筋力低下
コリン・銅・セレン不足
– 免疫低下
– 貧血
– 酸化ストレス増加
食餌性甲状腺機能亢進症
– 頸部肉(甲状腺組織を含む)を生で与え続けると発症
– 多飲多尿・体重減少・頻脈
犬猫の栄養不足を防ぐためには―長期の手作り食でも病気を起こさない
猫特有の必須チェック
動物性タンパク質は毎回食べている?
→ 猫は完全肉食動物、動物性たんぱく質を摂らないで健康維持は不可能
犬特有のチェック
脂質と食物繊維毎回食べている?
→ いき過ぎた低脂質高タンパクは腸内環境悪化
健康チェック(栄養不足の早期発見)
- 体重の変化(毎月)
- 被毛の状態
- 皮膚の状態便の状態
- 活動量の変化
獣医師との連携チェック
- 年1~2回の血液検査(腎臓・肝臓・電解質)
- 必要に応じて心エコー(心臓の超音波検査)
手作り食のリスクは、
「知らないまま続けること」「たぶんだいじょうぶでしょ」
で生まれます。
逆に言えば、
「正しい知識とチェック体制」があれば、長期でも安全に続けられると考えられます。
手作り食は「愛情」だけでは成立しない
サザエさんのころのように、犬はつながれて犬小屋に、猫は自由に出入りして屋根で昼寝する、というスタイルのペットはかなり珍しくなりました。そんな生活スタイルの変化に合わせ出てくる悩みを解決するために、手作り食が必要となる場面は実際増えています。
だからこそ、手作り食の正しい情報を知って、ある程度準備をしてから始めていただくことで、 手作り食の良さが引き出せます。
手作り食は、飼い主さんの愛情が形になった選択肢です。しかし、どんなに愛情をもっていたとしても 犬は犬、猫は猫、ヒトとは身体の仕組みや機能が異なるためオリジナルの栄養学があり、病気がある場合はさらに難しくなります。
あまりに軽く考えすぎると、そのときは喜んで食べてくれたとしてもその後トラブルにつながることもあるのが犬猫の手作り食です。本当に愛情をもっているのなら、その場の勢いでやってみるのでなく、 最低限正しい知識と計画をもって、まずは小さく始めていきましょう。




