オオハシオニコ(詳細はプロフィールをご参照ください)です。
毎日きかない日はないくらい、もう大げさでなく2000回くらいはきいたんじゃないかと思うこのお悩みが今回お話するテーマです。
- 最初の2,3日は食べてくれたけど、1週間もしたら食べなくなるパターン
- 最初から「ふんっ」、ていうかんじで食べないパターン
- 単独では絶対無理で、何かを混ぜこまないと食べないパターン(そしてその何かがどんどん増えていく)
などなど、多少は違えど、つまりが治療食による食事療法の継続が難しいということですね。
それぞれについて語っていくと、もーう長くなるのですがざっくり一言でまとめるとこのお悩みの答えは次のようになります。
そもそも治療食とはなんでしょう?
動物も人と同じように健康なときと病気になったときでは必要な栄養バランスが違います。それぞれの病気のときに、その状態に必要な栄養にあわせて作られた製品が治療食(食事療法食、処方食ともいう)です。
治療食は、それぞれある病気に合わせて栄養バランスを調整したフードです。
健康な犬や猫がそれと水だけで健康を保てるよう調節された総合栄養食のように、年齢や体格・品種による変化に合わせた栄養バランスではなく、疾患の種類により必要な栄養バランスを考えられています。そのため、治療食では総合栄養食とは異なった視点(主に食べやすさ)で製品のバリエーションが展開されています。
なぜ治療食を食べる必要があるのでしょう?
病気になったら治療(ここでは西洋医学の話をします、東洋医学の話はまたいずれ)をします。
治療は大きく二つにわけることができます。
- 病気をよくするものを加える:薬全般、水分、不足栄養素
- 病気を悪くするものを減らす:過剰栄養素
治療食は、その病気に足りない水分や栄養素を補い、その病気を悪化させる栄養素を除いたものです。
つまり、普段のごはんでは対応しきれない部分をカバーし、かつ健康状態に近づけるのが治療食です。そのため、治療食を健康なコが食べ続けることはかえってよくないこともあります。
またその治療食の名前をみて
「うちのこに合ってそう」
とかお友達から
「うちのこと同じ病気みたいだから」
と勧められたりして与えている治療食が、獣医師からすると見当違いのこともあります。
ごはんでありますが、治療の一環として提案されているものなので必ずその動物を診察している獣医師に相談することをおすすめします。
肝臓の治療食の特徴
一般的に肝不全といわれる病気の治療食は、その重症度によってタンパク質の制限が変わってきます。特に重度になってくると肝臓の代謝機能不全に伴う高アンモニア血症や肝性脳症をコントロールすることを目的として、特別にタンパク質・脂質・炭水化物のバランスを調製されています。
またタンパク質も消化率の高いもの、必須アミノ酸の割合が高められ、銅を制限し、亜鉛を添加しています。
尿路結石の治療食の特徴
尿路疾患の治療食は、水を飲むことを促して尿を薄める、尿路結石の原因となるミネラル成分の量を調整する、を目的にして調整されています。
また、尿石症が肥満や運動不足と関連があることもわかっているため、そういった肥満気味の犬・猫のためにカロリーを調整したり、繊維質を多く含む工夫がされています。
再発率が非常に高い病気であるため、できるだけ好んで続けて食べてもらえるよう各社ともに味の種類を多く用意しています。
腎不全の治療食の特徴
おもに慢性腎臓病の動物に給与する目的で特別に調製されています〈急性の場合またべつの栄養調整が必要)。
腎不全の重症度によって、リンの含有量を制限し、必須脂肪酸であるω3系不飽和脂肪酸(EPA、DHA)や抗酸化物質を添加しています。また、尿毒症により食欲が低下しやすいため、動物が好む香りで食欲を刺激し、腎臓病による食欲低下に配慮されています。腎臓病に伴う尿毒症やタンパク尿に配慮し、高消化性のタンパク質を調節して配合されています。
癌の治療食の特徴
一般的に癌を形成している癌細胞は、炭水化物を多くエネルギー源として利用することがわかっています。そのため癌細胞が利用しづらい(利用できるが、ひと手間かかる)タンパク質や脂質を多く含んだ、高蛋白質・高脂肪・低炭水化物の栄養バランスに調節することで、癌細胞への栄養供給を抑えながら動物の体に必要なエネルギーを供給できるように作られています。
また炭水化物を抑えることで、がん細胞が代謝の際に作る乳酸(動物の細胞を傷つける)をなるべく減らすことになります。
またアルギニンやω3脂肪酸などの抗酸化物質を多く含み、自己免疫力アップをサポートします。
他には心臓病や膵炎、難治性の胃腸炎などが治療食として多く使われています。
治療食を食べない場合どうしたらいい?
例えば尿石結石を溶かす効果のある治療食、新しい石ができるのを予防できる治療食、これさえ食べてくれればいいのになかなか食べてくれない犬や猫、いますね。
食べない
→もうだめ
→好きなものだけ食べてまた調子悪くなったら病院に行けばいいか
とやたらと極端に走る飼い主さんがたまにいらっしゃいますが(白か黒かみたいな)、それは動物に迷惑です。
自分にできる範囲をしっかりと伝え(動物にかけられる時間や手間の限界、考えられる費用ももちろん)、獣医や動物看護士に治療を提案してもらいましょう。
動物病院に相談したけどなんだか納得できない、どうしたらいい?
病気の原因はそもそも1つであることはほとんどないため、いろいろな治療法があるはずです。
その病院では無理でもべつの動物病院では可能な治療もあります。
ネットでどこのだれかともしれない人に相談するのももちろんありですが、やはりそこは別のプロにセカンドオピニオンを試してみることをおすすめします。
熱心な飼い主さんほどどうにか食べさせようとがんばりすぎて、食べないことにはペットの人生終わったとばかりの落ち込みようです。
本日は以上です。