関東でもそろそろ愛犬のフィラリア予防をはじめてほしい5月末、最近は本当に熱心な飼い主さんが多くフィラリア予防について質問を受けることも多くなっています。
そこで今回は、当院のような一般的なマチの動物病院で扱っているフィラリア予防薬をご紹介、そしてフィラリア予防について飼い主さんからいただくあるある質問にお答えします。
(動物の健康状態は診察してはじめてわかることです。こちらのブログは一般的な健康状態の動物についてお話ししていますので、動物の品種や年齢、持病の有無で異なる事が多くあります。実際の動物の症状や健康については、かかりつけ動物病院に行ってください)。
フィラリア予防薬のタイプいろいろ
チュアブルタイプ(おやつ型)
動物病院のほとんどがこのタイプのお薬を一番に処方しているのではないでしょうか。
実際嗜好性も高く、97.8%の飼い主さんがこのタイプの予防薬を「ワンちゃんが喜んで食べてくれる」と回答しています。(DSファーマアニマルヘルス(株)調べ 2012)
原料に牛肉、もしくは鶏肉を使用していますので、それらにアレルギーのある子は避けてることをおすすめしています。
錠剤
普通の薬、いわゆる粒のお薬です。
牛肉や鶏肉のアレルギーがあってチュアブルタイプを使えない子、おやつがあまり好きではない子はこちらの錠剤タイプを使用します。好きなごはんやお芋、チーズなどにくるんで与えてもらうとあげやすいようです。
フレーバー錠
去年くらいから発売された、だんだんと広がりつつある話題のお薬です。
見た目は小さい錠剤でチュアブルタイプのお薬ほどおやつ感があるわけではないのですが、ビーフやかまぼこ風味のフレーバーが付いているので、砕いてごはんに混ぜるとほとんどの子がそのまま気付かずに食べてくれるという錠剤です。
これらの飲ませる経口薬は、一錠でフィラリア症予防、腸内寄生虫(回虫・鉤虫・鞭虫)駆除、外部寄生虫(ノミ・マダニ)駆除がいっぺんにできるもの、フィラリアのみのもの、ノミとマダニだけのものといろいろあります(そしてお値段もいろいろです)。
オールインワンタイプはこれまで別々のお薬で駆除しなければいけなかった数種類の寄生虫の予防が、たった1錠のお薬で可能となりますので、スムーズに与えることができれば飼い主さんも管理が楽だと思います。
滴下タイプ
上で挙げた以外にも、どうしても口からお薬を飲めない子の為に、首元の皮膚に滴下して使用するタイプのフィラリア予防薬も置いています。
注射タイプ
さらに、「口からも飲めないし、皮膚に滴下するのも嫌がって暴れまくる。でも予防はしてあげたいし、どうしたらいいのか分からない」という方の為に1回注射を打つと1年間効果が持続するタイプのフィラリア予防薬もあります。
このようにフィラリア予防薬一つを取ってみても色々とあるため、詳しくは診察中に獣医師と飼い主さんとワンちゃんとで、どの薬が一番合っているか相談して決める必要があります。
飼い主さんからきかれること
フィラリア予防薬の副作用はありますか?どのくらいで出てきますか?
はい、あります。
どのフィラリア予防薬にも副作用についての注意事項があるように、成分がミルベマイシンオキシムであろうと、モキシデクチンであろうとイベルメクチンであろうと(他いろいろあります)一定数の副作用は発現しています。
ミルベガード錠パンフレットより
薬の成分が吸収される30~60分以内に出てきます。
ただし、副作用とは薬の作用のうち体に都合の悪いものをいっているので、極端な話副作用のない薬はないと言えます。それは、整腸剤でも漢方薬でもサプリメントでも同じことです。
フィラリア予防薬のアレルギーはありますか?どのくらいで出てきますか?
はい、あります。
大きく2つにわかれます。
即時型アレルギー
食物アレルギーの多くはこのタイプであり、ほとんどの例で、該当する食物を摂取してから 2時間以内にアレルギー反応がおこります。
専門的に言うと…
IgE抗体が皮膚・腸粘膜・気管支粘膜・鼻粘膜・結膜などにいる肥満細胞に結合した状態で抗原と出会うことにより、化学伝達物質(ヒスタミン、ロイコトリエン、等)が放出され、アレルギー反応が引き起こされます。
遅延型アレルギー
抗原摂取後、アレルギー反応出現まで数時間~数日かかります。
専門的に言うと…
IgE抗体に依存しない非即時型(遅発型、遅延型)と呼ばれる反応で、メカニズムはまだ未解明ですが、T細胞の関与(Th1/Th2のバランス偏奇説、等)の可能性が示されています。
フィラリア予防薬の副作用、アレルギーなどが出る子は多いのですか?ほとんどないことなのでしょうか?
おやつタイプで示されているデーターがあります。
カルドメック錠HPより
過去6年間で投与後の異常所見発生率は0.00286%でした。
(異常所見のほとんどは嘔吐、下痢、軟便)
多いか少ないかは、主観的なご判断にお任せします。
フィラリア予防薬を服用後、どのくらい吐かなければ効いていますか?もう一度与えたほうがいいですか?
錠剤タイプの予防薬でこのように示されています。
システックHPより
おやつタイプはもう少し吸収に時間がかかる可能性があるため、3時間くらいと言われることもあるようですね。
他のいつも飲んでいる薬と一緒に飲ませてもいいですか?
万が一吐き気が出てしまうことなどを考え、当院では他とは30分以上、できればお昼におやつとして与えるようお話ししています。
もう、5年くらいずっとおやつタイプを与えていますが、今回フィラリア予防薬を与えた次の日から下痢になりました。
忙しくて病院にいけないでいるうちに治ってしまいましたが、今からでも行ったほうがいいですか?
また下痢はフィラリア予防薬のアレルギーなんですか?
違うとしたら下痢の原因はなんですか?
下痢はもう治まっているということなので、他に症状がなければ診察する必要はありません。
アレルギーかどうかですが、普段与えているおやつやごはんの中に入っていないタンパク質や分子量の大きい物質が予防薬に入っているようであれば可能性はあります。もしそうでないとすれば、駆虫薬そのものに対する薬物アレルギーの可能性もありますが、ここ5年(そして先月も)月に一度のみ使っているものに急性薬物アレルギーは起こりづらいため、一般的な胃腸炎を考慮します。
より徹底的に調べたいのであれば
- アレルギー検査を行う(リンパ球、IgEともに)
- 検便を行う
- 少量のその予防薬を食べさせてみる
ことです。
が、
①は4~5万円かかり、②は結果が出づらい(下痢は改善しているため)、そして③はより重症な反応を起こすかもしれません。
よって、おやつタイプではない違う成分のフィラリア予防薬への変更をたいていはおすすめいたします。
ちなみにおやつタイプは大半が国産牛肉であり、造形のためにトウモロコシ粉、米ぬか、ショ糖、卵粉末、大豆油、ゼラチンが含まれています。
当院ではアレルギー経口のわんちゃんには処方を念のため避けています。
しかし牛肉やトウモロコシに食物アレルギーをもつわんちゃんの飼い主さんが知らずにネットで予防薬を購入して与えていた経験もあったりします。
特に大きな事故は起きてはおりませんが、くれぐれもお気を付けください。
フィラリア予防薬の事故報告まとめはこちらから。
注射薬は重大事故につながりやすいようですね。
本日は以上です。