急に暑くなってきたせいか、熱中症で酸素室が連日満室です.
日中のお散歩はなるべく避けてほしいものです。
さて、先日来院されたミニチュアダックスフンドくん。
暑さのせいか食欲がなさそうだったのでわんちゃん用の牛乳を生まれてはじめて飲ませてみたところとても喜んでお代わり連発で、結局 200mlすべてあげてしまったそう。
その後二時間くらいでおえっと嘔吐。
でも、元気はあって、けろっとしていたので夜は消化にいいとネットで調べた鯛のお刺身をあげました(大喜び)。
また二時間くらいして嘔吐。
でもやっぱり元気で、寝る前のお散歩も行きたがったので、またまたネットで調べ空腹時に吐くのを予防するため再度牛乳をあげて就寝。
翌朝みたところ、数か所の吐いたあとがあり、 もう何を与えたらいいのかわからない…と来院されたのでした。
食物アレルギーとは?
食物アレルギーとは、特定の食物を摂取することにより免疫システムが過敏に働き、体に不利益な症状が現れることです。
そのため糖が原因の牛乳で下痢をする乳糖不耐症や、細菌毒が原因の食中毒などは含みません(免疫システムが関係していないため)。
なぜなるの?
原因は、食物に含まれるたんぱく質です。
食物を摂取し腸管から成分が吸収される際に、体が特定のたんぱく質を異物だと認識すると、血液中のIgE抗体と呼ばれるたんぱく質が反応してアレルギー症状が出ます。
つまり卵アレルギーのわんちゃんは卵のたんぱく質に反応するIgE抗体を、牛乳アレルギーであれば牛乳のたんぱく質に反応するIgE抗体を持っています。
卵アレルギーがあっても牛乳で反応しないことがあるのは、そのわんちゃんのIgE抗体は卵にのみ反応するためです。
治るの?
残念ながら、ほぼ治りにくいです。
治療はあるの?
食物アレルギーには、治療薬はありません。
獣医は原因食物を除くまたは加工して食べられるようなペットフードを指導します。
ただし、その除去は必要最小限にとどめます。アレルギーの発症を怖がってやみくもに食物を除去するのではなく、フードをうまく取入れ健康的かつ楽しい食生活を支援するのも治療の一環です。
どんな症状がでるの?
食物アレルギーには大きく2つのタイプがありますが、その中で問題になりやすい、摂取後2時間以内に現れる即時型食物アレルギーの症状についてお話します。
食物アレルギーは、さまざまな症状が出ます。発熱、頭痛もありますし、ぐったりと眠るようなこともあります。
比較的多いのが皮膚症状でじんましんや、それに伴うかゆみがでています。
また呼吸器症状がでることもあります。呼吸困難、咳やゼイゼイ、ヒューヒューと雑音を発するゼイメイなどです。
粘膜に症状がでることもあり、まぶたや唇などの粘膜がよく腫れます。ひどいと顔全体がむくむムーンフェイスといわれる状態になることもあります。
よく
と心配される飼い主さんがいらっしゃいますが、大丈夫です。
皮膚症状や外表的な粘膜症状は、つらいですが程度がひどくなっても命を落とすことはありません。
しかしながら、気道の粘膜症状は、気道の軟骨に囲まれ外側に腫れることができず内側に腫れるので、もともと気道の細い短頭種などでは最悪の場合には窒息という状況になります。
最後に消化器症状で、腹痛、嘔吐、下痢などです。
具合が悪いときに食べ慣れないものは与えない
食物アレルギーは、どんな種類のわんちゃんにも起こり得る病気です。
そのためふだんはさておき、具合が悪い、食欲がないようなときに、普段あげたことのないモノ(おやつにしろごはんにしろ)を試すのは危険です。
わんちゃんは喜んで食べてくれるかもしれませんが、かえってより具合が悪くなり、症状の把握が難しくなってしまいます。
さらに本当にこれが原因か知りたいからと、短期間に何度も試してみるのも危険です。
アナフィラキシーショックという急性アレルギー反応がおきることがあるからです。
アナフィラキシーショックとは、アレルギーが原因で複数の臓器症状が急速に全身に出る状態です。血圧の低下に伴い活動性の低下、意識障害、ときには心肺停止という状況もありえます。
ちなみにアメリカでは毎年これで100名以上が亡くなっているようです。
さて、結局先にご紹介したダックス君ですが、彼に牛乳や魚のアレルギーがあるかはわかりません。
しかし大好物がヨーグルトであったり、ねこちゃんの白身魚の缶詰を盗食したことがあることを考えると可能性は薄いです。
つまり牛乳やお刺身を吐いたのはアレルギーではなく暑さでもともと胃腸の働きが弱っていたところに食べなれない、消化しなれないものを続けざまにたくさん与えたことによる可能性のほうが高いと考えられます。
世の中にはやたらとアレルギーのせいにしたがる人がいるものですが、冷静に考えていつも口にしているものに今回原因と考えているものが含まれていないか、また交差反応を起こしていないか検討する必要があります。
ちなみに、最近人の成人で言われている遅延型フード(食物)アレルギーというのは免疫複合体が関係するアレルギー3型であり、このIgE型のアレルギー1型とは異なります。
このへんごっちゃになっていて、グルテンフリーやら食物アレルギーやらが混同している困ったネット情報が多くなっていまうのでご注意ください。
きちんと調べるのであればアレルギー検査になりますが、ちゃんと結果が正確に出るようなところに出すと2万円以上はかかります。
そういったお話を飼い主さんとしたところ、今回は対症療法(吐き気と食欲不振の治療)を行い、今後は牛乳やお魚はなるべく与えず様子を見るということになりました。
それっきり吐くことはなく、午後にはいつものごはんを食べるくらい回復したそうで何よりです。
動物が食欲や元気がないときにあげられるいつものスペシャルおやつやごはんをあらかじめわかっておくといいですね(このこであればヨーグルト)。
本日は以上です。