こんにちは、オオハシオニコです。
ペットフードメーカー勤務でもなく、ご相談受付にいるわけでもなく、普通の動物病院で普通に診療している自分ですが、ほぼ毎日一度はきかれるのが
病気で来たコも、予防で来たコも等しく飼い主さんがフードのことを気にかけてくれているのでうれしい限りです。
そんなとき健康なコの飼い主さんであれば逆にきいてみます。
つまり「とくに心配事のない元気なコであれば、飼い主さんが納得して買われたものでよい」わけです。
「そんなこときいてない!飼い主に責任を押しつけるのか?!」
とか言ってくる人もいるかもしれませんが、そもそもその動物をどう飼うかの最終的な決定権は飼い主さんにあり、飼い主が責任をおうものですから、そうとしか言えません(もちろん極端な虐待に繋がるようなものは別です、また処方して出す治療食も全く別の話です)。
その動物とどう暮らし、どう生きていくかは飼い主さんによって考え方が違って当たり前なのです。
その動物にどれだけの時間とお金と手間を費やすかを決めるのも飼い主さんなので、どこでどんなふうに動物のごはんを用意するかは本当に様々です。
最近よく聞くグレインフリーっておすすめじゃないの?
グレインフリーときくとペットフード!として日本では知られていますが、そもそもはアメリカの人の病気の治療としてグレインフリーは始まりました。
アメリカでは小麦やライ麦のグルテンに対し100人に1人がアレルギー反応?!
2000年台に入り、アメリカでは少なくとも1種類の食品にアレルギー反応を起こす人が1200万人といわれるほど、食物アレルギー患者が増えています。
中でも、小麦やライ麦などに含まれる蛋白質の一種グルテンに免疫が過剰反応を起こすアレルギー疾患、セリアック病に悩む人々が多く、ある医療機関は、アメリカでは100人に1人がセリアック病と報告しています。
セリアック病の患者はグルテンを含む食品を摂ると、免疫系が腸を攻撃してダメージを与えるため、小腸から栄養分を吸収できなくなってしまいます。
日本と違い、全国民が健康保険をもっているわけではないアメリカでは、きちんと診断されている人は、推定患者数の10分の1ほどと言われています。
また今のところ完治させる治療法はなく、グルテンを含む食品を食べないことしか、症状の悪化を防ぐ方法はありません。
主な症状は、慢性の下痢、腹部の膨満感と痛み、貧血、疲労感、痛みとかゆみを伴う湿疹などです。
それに目をつけた食品メーカーが、医者にかかれない人たちの不安をあおったことも手伝い、グルテンフリー食品市場は毎年20%ずつ増加しているのが現状です。
じゃあ日本ではグルテンフリーの人のごはんが少ないのはなぜ?
もちろん同じ病気の患者さんは存在します。いわゆる小麦アレルギーの状態(アメリカに比べ食品にコーンが使われることが少ない)なので、麺類やパン類、粉ものやお菓子、厳しくは調味料も厳選されます。
しかし、アメリカのような単一ジャンクフードを食べる食習慣が比較的少ない国内では、あまり人のグルテンフリーフードは広まっていないのが現状です。
ペットフードのグレインフリーフードは普通と何が違うの?
穀物(grain:グレイン)は、ペットフードでは主に「イネ科穀物」をいいます。
米や大麦、小麦、トウモロコシなどのことですが、一般的なドライフードによく使用されているものは小麦とトウモロコシです。
つまり「穀物不使用」フードといっても全く穀物を含んでいないということではなく、「イネ科穀物」を他の穀物・穀類に置き換えたフードということが、普通と違った点です。
グレインの代替の穀物って何?
現在、市販されている穀物不使用フードは、炭水化物源としての小麦やトウモロコシの「イネ科穀物」が「イモ類・マメ類」へ置換えられています。
具体的はイモ類としてサツマイモやジャガイモ、マメ類ではエンドウ豆がよく用いられています。
アレルギー用フードとはまた違うの?
一部違って一部同じです。
グレインフリーでカットされている、小麦やコーンにアレルギーを持つ動物であればその対策になっているため非常に有効です。
グレインフリーで代替として使われているイモ類豆類にアレルギーをもつ動物であれば、逆効果です。
グレインフリーフードは、グレインに対象を絞ったものであり、アレルギーフードは主要なアレルギーをカットし、成分を組み合わせたものです(そのためグレインを含むこともあります)。
じゃあアレルギーでなければグレインフリーフードは意味がないの?
そうとも言えません。
人で糖質制限ダイエットが流行っているように、グレインをカットすることには血糖値の上昇をゆるやかにして肥満や糖尿病を予防するメリットがあります。
また、質の悪い炭水化物は消化不良の原因になるので、安価な普通のペットフードを食べているよりはおそらく腸の状態はいいはずです。
犬のアレルギーも小麦が多いの?
最近の研究で↓のようなものがあります。
2016年に発表された論文ですが、そのデータがなかなか興味深いです。
(Murayama 2016)
日本国内と北米の犬278頭、猫56頭の食物アレルギーのデータのまとめが記載されています。
犬は大豆にも1/4が反応を示していること、猫はそもそもグレインに反応しているのかどうかが不明です。そして猫は魚が意外と反応率が高いようで、乳製品は犬猫ともにあまり積極的にとりたいものではない結果です。
グレインフリーフードについては最近、むしろ心臓疾患が増えたという報告が出ています。
やはり万能な食材はなく、何かばっかり、偏って食べることはよくないのかもしれません。
フードをすすめるとき気にしていること
プロとして選ぶ基準の1つとしては「安定して供給されるか」、つまり同じ品質のものを同じように用意し続けることができるか、があります。
意外かもしれませんが、ペットフードも価格や大きさ、内容はよくマイナーチェンジがなされ、超敏感な動物だと食べなくなることもあります。
また、混入や品質表示以外のフード出荷がなされてしまった時は、メーカーの自主回収があります。
もちろんそんなトラブルはないに越したとはありません。
しかし、起きてしまったときに責任をもって回収、代替品を用意することができるか、は飼い主さんにフードをすすめる立場としてはとても大事です。
SNSで見かける、新規フードの広告をみると、だいたいの人が今飼っている動物が元気であったとしても、不安を煽られ買ってみたくなると思います。
それはそれで、選択肢が増えるのはいいことですし、運命?のフードに巡り会えるかもしれません。
ただ、ちゃんと製造元として品質を保ってきちんと作り続けてね、と願うばかりです。