週末の混雑がとぎれたころ、外に出てみたら風がだいぶ秋でした。
さて、最近何人かの飼い主さんが話題にされるこちらのニュース、みなさんごぞんじでしょうか。
生協の組合員向けに食品などを販売する生活クラブ連合会(東京)が扱っていた犬や猫用のペットフードから、サルモネラ菌や大腸菌群が検出されていたことが23日分かった。すでに販売は中止しているが、14匹の犬が死ぬなどの被害が出た。仕入れ先の製造工場などを調べたが、汚染の原因は分かっていないという。
問題があったのは「犬・猫用ササミ姿干し 無塩」で、北海道栗山町の工場で製造されていた。18年4月から約4万7千個を販売し、19年1月以降、ペットに嘔吐や下痢などの被害の相談があり、3月に販売を中止した。調査によると、計68匹の犬と猫に症状が出て14匹の犬が死んだ。(共同通信より)
日本のわんちゃんに大人気のささみ、その姿干しなのできっと人気の品だったと思われます。
しかもあの生協で扱っているものということなので、一般の方と同様かそれ以上に愛犬のごはんに気を使っていた飼い主さんたちだったのではないかと考えられます、そこに起きてしまったこの事故です。
製造工場や関係者などを調査中ということですが、まだ原因がわかっていないのが恐ろしいことですし、とても残念です。
でも実はこれと同様のことは起きている過去があり、またこのようなことは起こるのではないか?と心配されていたのです。
以下でご説明します。
ちなみに、そもそも犬や猫は人よりずっとサルモネラ菌に強い(多く摂取してしまっても大丈夫)です。そのため過去に起きた事件では、サルモネラ菌に汚染されたドッグフードを誤って食べた?!幼児が食中毒になるというものもありました。
ペットのおやつのせいでわんちゃんが死んじゃったってこと?
正しくはペットのおやつに付着していたサルモネラ菌や大腸菌による食中毒で、たくさんの犬や猫に消化器の異常(下痢、嘔吐)が起こり、14匹のわんちゃんは残念ながら亡くなってしまったそうです。
詳細な情報がない以上、そのすべてがおやつだけが原因だったのかはわかりませんが、なんにせよそのおやつに一定以上の食中毒原因となりうる細菌がいたということは間違いないようです。
どうしてそんな危険なおやつが販売されていたの?
ペットのおやつはフードはもちろん一定の基準を守って作られています。
ペットフード関連法令
しかも、今回は製造工場や関係者を調査しても原因不明、つまりその製造過程に食中毒をひきおこすようなアクシデントはないということです。
なぜ、このようなことになったかはいまだわかっていないのです。
それってよくあることなの?
よくはありませんが、実は過去にも報告がありました。
アメリカでは2007年、2012年と大規模なサルモネラ菌混入ドッグフードのリコールがありました。
日本でも近年アメリカFDAの報告を受けて、輸入ドッグフードの自主回収が実施されています。そしてそれを重くみたペット栄養学会は去年の発表でサルモネラ菌の調査を発表した論文を高く評価しています。
そもそもサルモネラ菌て何?
おおくの種類がありますがサルモネラ菌食中毒の原因は主にサルモネラ・エンテリティディスという細菌です。
人の国内の食中毒事例では、発生件数、患者数ともに毎年上位にランクインされています。
サルモネラ感染症は、原因食品として「鶏の卵」がよく知られていますが、それ以外にも食肉での感染や、また保菌している人やペット(犬猫、トカゲなど)からの接触感染によって発症することもあります。
潜伏期間は、5~72時間(平均12時間)です。
どうやって感染するの?
食中毒経路
サルモネラ菌に汚染された(たくさんついた)食品が原因 今回はたぶんこれ
- 汚染された食品の生、または不十分な加熱により食べた場合
日本は卵かけごはんやすきやきなどで生卵を食べる機会が結構多いですが、鶏の卵はもっともサルモネラ菌汚染の可能性がある食品です。
また生肉、生レバーなども要注意です。 - 汚染された調理器具や指を介して、二次的に汚染された食品を食べた場合
工場や家庭での食品を扱ったまな板、包丁、布巾、スポンジなどが原因になりやすいです。
感染症経路
- 感染した人や動物の糞便が原因
保菌者(腸内にサルモネラ菌を多くもっている)の糞便を処理した後に、手洗い・消毒が不十分で汚染された手指を介して接触感染する場合 - 汚染された箇所(保菌者が用便後などに触れたドアノブやテーブルなど)に触れることで、手指が汚染されてしまう間接的な接触感染の場合
どういう症状がでるの?
嘔吐、腹痛からくる食欲低下(ご飯を食べない)ことで始まり、その後発熱し、下痢を繰り返します。こういった症状は3~4日から1週間以上に及ぶこともあります。
シニア犬猫や免疫力が低下する病気(癌、糖尿病やクッシング等の内分泌疾患など)の動物は重症化しやすく、回復も遅れる傾向があるので注意が必要です。
どうしたらサルモネラ菌や大腸菌から愛犬を守ることができるの?
動物に対する感染予防はおもに食中毒経路を断つことです(というかそもそも犬猫はサルモネラ菌を少量保有している可能性があるので)。
とくに手作り食やトッピングを多くしている飼い主さんは以下のことに気をつけましょう。
- 卵は冷蔵保存し、割ったら早めに食べきる。
- 調理器具は良く洗い、熱湯や次亜塩素酸ナトリウム(0.02%)、消毒用エタノールなどで消毒する。
- 肉類を生で食べることは控え、よく加熱する(75℃、1分以上がおすすめ)。生食でとりいれられる栄養素があることはわかりますが、そのメリットを上回る恐ろしさが食中毒です。
- 生肉を扱ったあとは、手洗い・手指消毒をしてから他の食品を扱うようにする(まちがっても肉を切った後にキュウリやトマトを切ってあげたりすることはさけてください)。
- 肉は他の食品と調理器具や容器を分ける(まな板をわける、とかですね)。
じゃあ今回の事件のように、輸入品でもなく手作りでもなく、国内産を購入してきたもので食中毒になってしまうのはどう防げばいいのでしょう。
極端なことをいえば、食品分析センターにペットフードの分析や汚染状況をみてもらうことは可能です。
しかし、毎回毎回調べることは現実的に不可能ですし、だれかに毒見してもらうこともできません・・・。
ではどうすればいいでしょうか?
結局のところ、やはり一つのもの、単品を一度に多く与えることは控える、ということでしょうか。
とくに新しいおやつやフードは食品汚染うんぬんではなく、お腹に合わないことはよくあります。
季節の変わり目は食欲が落ちやすいため、好物ばかり与え続けてしまうこともありがちですが、やはり何かひとつに偏って与えつづけるというのは、とくに体調を崩しているこにはおすすめできません。
何かおかしいな?とおもったら、なにもそのごはんやおやつにこだわることはありません、一度止めて信頼できる動物病院にご相談ください。
亡くなってしまった14匹のわんちゃんの冥福を祈ります。
本日は以上です。