オオハシオニコです。
ずつと缶づめウェットフードをおすすめしてきて、今回は最終回です。
缶詰ウェットフードが高い理由、それでもおすすめする理由、効果的なあげ方も知りたい方は、こちらの記事もおすすめします。
高いけど、コスパ悪いけど、水分含んでいるから、水分を足せるから・・・となんでそんなに、水分水分いうのでしょう。
犬や猫にとって、そんなに水分というのは大事なものでしょうか?
犬や猫に水分を多くあたえると、どんないいことがあるのでしょうか?
そしてそんなに犬や猫は水分は不足しているのでしょうか?
水分はとても大事、ごはんより大事
ヒトも含め動物は水がなければ生きていけません。
ごはんは3日食べなくても大きな健康異常はありません。しかし水を3日飲まないと死亡するでしょう。
年齢にもよりますが、体の6~7割を構成しているのは水なのです。
また、さまざまな生理反応に水はかかせない、つまり水がなければ体は正常に動くことはできないものなのです。
ごはんだけ食べても水分が不足していれば、それを消化したり体全体へ運んだり、それを利用することができないのです。
体温の調節や体内の循環にももちろん欠かせないため、水分が不足していれば体温を一定に保つことができず、病院に行ってもせっかくの治療に対しとても反応が悪いです(お薬がききづらい)。
そのため犬や猫が病気になったとき、口からの水の補給が不十分な時は動物病院では皮下輸液や静脈輸液等をします。
輸液による水分補給は脱水を改善させるだけではなく、お薬剤作用を助けてくれることを期待するわけです。
ちなみに・・・水分が15%以上失われる重度脱水は死亡の可能性の高い非常に危険な状態です。
健康診断でシニア期といわれる、7歳以上の高齢の犬や猫の結果を毎年500件以上みていますが、だいたい半分は軽度脱水、2割は治療をおすすめする何らかの病気をもって脱水、の状況です。
うちのこ大丈夫?な飼い主さんに簡単にできる脱水チェックとして、皮膚つまみテスト(ツルゴール評価法)があります。
ヒトでは救急の時にこれを行い、脈圧とかを追加することで重症度を簡易決定できるのですが。
正直がっつり体毛があり、かつ皮膚にもともと余裕のある(だから皮下輸液が可能なわけです)犬や猫では、正しく評価ができるとはいえません。
まあ、背中の皮膚つまんでぷるんってもどるようであれば大丈夫、まったくもどらずそのままだとかなり危ない、くらいは言えますが。
水分が十分だと病気予防になる
健康な犬や猫であれば、水分をたくさんとるということは、単純に出ていくおしっこも量が多くなるので、尿石症や膀胱炎、腎不全などの泌尿器系の病気を防ぎます。
実際、どんなに尿石症対応のカリカリドライフードを食べても膀胱結石が消えない!コが、缶づめウェットフードに変えると、二週間くらいで結石が消え、また新しい結石もできなくなることがあります。
お湯でのばせばより効果促進、パワーアップです。
水分が十分だと健康になる
体の新陳代謝に必要な水分が十分にあることで、内臓はもちろん皮膚の状態が改善しやすくなります。
例えば肝臓の代謝の働きがスムーズになります(二日酔いには水をたくさんとるのが効果的の理屈と似たようなものです)。
もともとの肝臓の解毒効果を高めることで、体内から不要な老廃物が出やすくなります。
また、皮膚の柔軟性がなかったり、ごわごわしているようなアトピー体質の犬や猫が水分をとれるようになると、毛が柔らかく生えやすくなってきたり、皮膚もすべすべの状態になってきます。
もちろんすぐには効果が出ません。
肝酵素の半減期や皮膚のターンオーバーを考えても、1カ月程度はかかるはずです。
水分が十分だとやせる
いっぱい水を飲み、しっかりおしっこが出ていれば確実にやせます!
特に一日中ごろごろしてしまいがちな猫ちゃんには効果的です。
お家のなかに飲み水のお皿はひとつだったりしませんか?
おしゃれでなくて大丈夫です、家の中に最低3ヶ所は水飲み場所を用意してください。
ちょっと水の交換が手間ではありますが、思い立ったとき飲める環境が大事なので、日中お家にいることがおおいわんちゃんや猫ちゃんのために、ぜひ用意してあげてください。
動物のよくいる場所、ごはんを食べる場所、そして寝る場所に置くことがおすすめです。
たくさんの犬や猫を飼っている多頭飼いのお宅は、より気をつけてみましょう。
だれがどのくらい飲んでいるかわからないので、犬や猫の数<水飲み皿の数が必要です。
さあ飲もうかな、というときにだれかが先に飲んでいたり、お皿が汚れていたりすると我慢してしまうことがあるため、ひとつのお皿にたっぷり入れるというより、数を増やしてあげることがお水をたくさん飲んでもらうためには有効です。
水分をとりすぎることはない?
水分をとりすぎることはあります(とりすぎていいものはありません、酸素だって中毒になるくらいですから)。
夏に話題になる水中毒という病気があります。
一般的には、ヒトの精神疾患の患者さんの症状として、薬の副作用や強迫観念(~しなければ!というとても強い考え)で体の処理能力の限界を超えて水を飲んでしまう病気です。
最近の猛暑の熱中症対策として、エアコン嫌いのお年寄りががんばって飲みすぎてしまい、体液が薄まりすぎる低ナトリウム血症や胃拡張を起こしてしまうことでたまに話題になります。
獣医師的には「水中毒=子牛」で習うので(ちょっと病態は違います)、へー、ヒトでもなるのねくらいなもので、特に珍しくはありません。
つまり、水であってもやはり体の処理能力の限界はどの動物にもありえるのです。
犬で大型犬や胸の深い犬種であれば、一度に大量の水やごはんを飲んだり食べたりすると(私が経験したことのあるのは、シェパード、ラブラドール・レトリバー、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、ミニチュアダックスフンド、イタリアングレーハウンド、トイ・プードルあたりでしょうか)胃が捻転したり拡張したりする(胃捻転・拡張症候群)ことがあります。
大量の水を飲んだあとお散歩など運動したりすると、起こりやすいといわれることもありますがまだそのメカニズムは不明です。
不安、ストレス、興奮をしやすいナイーブな犬に起こりやすいとも、手術やペットホテルなどの預かりによっても起こりやすいともいわれていますが、そうでないコたくさん診ているので難しい病気だなと思います(なってしまうと命にかかわることもあるため、予防的に胃固定といって胃をお腹の一部に縫いつける手術をすることもあります)。
また、心臓が機能異常でうっ血、肺水腫になる危険があるようなコは飲水制限が必要になることがあります。
尿路閉塞にによる急性腎不全、膵炎による嘔吐下痢、熱中症による電解質異常のときなども水分は控えるよう指示されることがあります。
工夫をしても水を飲まない犬や猫、無理やり飲ませたほうがいい?
飲まない理由があるはずなので、まずは動物病院でご相談ください。
注射器やスポイトで水を与えることが、誤嚥性肺炎の原因になることが本当に多いので、飼い主さんが良かれと思ってやっても逆効果になりえます。
万能な健康法はありません。
が、おうちで缶づめウェットフードを効果的にあげるくらいの水の量であれば、まず問題はおこりません。
本日は以上です。