手作り食

腎臓病の犬猫だけど牛乳はだめですか?にプロが解説

オオハシオニコです。

腎臓が悪い、腎不全です、腎臓の働きが弱い。

言い方は異なりますが、体から不要なゴミを出すための腎臓が働かないと、体はゴミ屋敷です。

生きてる限り腎臓はお休みはできないので、連休中も台風の時も、人の腎臓の透析患者さんがそうであるように、慢性腎臓病を患っているペットの飼い主さんは週に何回も点滴が必要です。

そんなおひとり、週に3回皮下点滴を行っているみくちゃん(仮名)の飼い主さんから質問がありました。

飼い主さん
飼い主さん
腎臓病は脱水すると怖いんですよね
オオハシ
オオハシ
そうですね、普通にご飯や食べているうちは脱水することは少ないですが、みくちゃんのように腎臓病を患って長い子では、少しでも食欲が落ちたり吐いてしまったりすると、脱水する危険がありますね
飼い主さん
飼い主さん
最近涼しくなってきたのか季節の変わり目のせいか、水を飲む量が少なくなってしまったんです。うちの子はもともと牛乳が大好きなので、飲み水にちょっとだけ牛乳を混ぜてもいいでしょうか?それとも牛乳はやっぱり腎臓に良くないから絶対ダメなんでしょうか

みくちゃんの飼い主さんは大変熱心な方なので、以前乳製品はカルシウムも多いがリンも多いので、あまり飲ませないようにしたほうがいいというお話をしたのをしっかり覚えていただいているようです。

でも、確かにみくちゃんは最近あまり水分を取らなくなってきてしまっています。

飼い主さんもご飯に水分を加えたりおじやを作ってあげたりいろいろ工夫されているのですが、どうやらみくちゃんはたま~に出てくる牛乳を待ってしまっているようなのです。

果たしてみくちゃんに牛乳をあげても良いものでしょうか?

腎臓病でリンの制限が必要な理由

腎臓の働きが低下すると現れる不具合の1つとして、体からリンを排泄する力が低下し、高リン血症になってしまいます。

血液中にリンが増加しすぎるといろいろな症状が出て来ます。

カサカサした乾燥肌や激しい痒み、関節の周辺では沈着したリン酸カルシウムのために強い痛みをひき起こしたり、関節の腫脹や変形、運動障害などをひき起こします。血管にもリン酸カルシウムが沈着しやすく、動脈硬化を悪化させて脳出血、心筋梗塞、末梢循環障害による手足の痛みや壊死などをひき起こします。

それに食欲も落ちてしまうので、ただでさえ食べないのにますます食べなくなってきます。

また高リン血症は血液中のカルシウムを低下させ、その結果骨からカルシウムがひっぱられ、骨がもろくなってきます。

リンを制限するためには

食品中に含まれるほとんどすべてのタンパク質は、リンを含んでいると考えることができます。しかし、犬や猫は栄養バランスを計算されたペットフードを食べているわけなので、リンの制限はさほど難しいことではありません。手作り食の場合も基本的にはタンパクの摂取量を守っていればよいのです。

しかし食品の中にはとくべつリンが多いものと、保存料としてリン酸を添加されているものがあり、これらは要注意です。

高リン食品として次の6つが重要です。

  1. 乳製品
  2. 卵黄
  3. 肝臓
  4. 獣肉・魚肉加工品
  5. 骨ごと食べる小魚
  6. 豆類

乳製品や小魚類はカルシウムを多く含んでいるため、骨を丈夫にするためにたくさん取ったほうがいいように思われます。しかし、腎不全の動物には当てはまりません。カルシウムもリンも多く含んでいるため、先ほど述べた理由から逆に骨をもろくする結果となります。

誤解されている飼い主さんが多いので気をつけてくださいね。

 

 

 

腎臓用のサプリメントは日々進化を遂げています。

効き目だけでなく、おいしく食べやすくなってもいるので、与えられるなら使っていただくといいですね。

 

さて、こういった理由からするとやはりみくちゃんには牛乳を飲ませない方がいいような気もしますね。

しかし飼い主様によくよく聞いてみると、みくちゃんはお水の中に牛乳がほんのちょっとでも入っていると、匂いがわかるのか喜んでお水を飲むようになるそうです。

どのくらいちょっとかと言うと・・・お水の色がほぼ変わらないぐらいでいいようなのです。

いくらみくちゃんが小さな犬だからといっても、数滴でそんな寿命が何日も変わるとは思えません。それよりもむしろお水を飲まないことで脱水し、腎臓病が急速に進んでしまうことの方が深刻です。

なにより牛乳が入ったお水であれば、自分から喜んで飲むというところが大きなポイントです。

水を飲ませること自体は、シリンジやスポイトを使って飼い主さんがどうにか与えることはできるものです。しかしこの腎臓病という長い病気と付き合っていかなくてはならないときに、果たして水を飲まされることは動物にとって幸せなことでしょうか?
わずかな牛乳が入ったお水を自分から喜んで飲むのと、シリンジで無理やり水を飲ませることどちらが幸せかは言うまでもありません。

さらにシリンジで無理やり飲ませていると、いやいやから誤嚥をする可能性もあり、もしそうなってしまった場合飼い主様は自分を責めてしまうかもしれません。

 

ペットの治療に関しては確かに様々な意見があります。

1分1秒でも長く生きていて欲しい飼い主さんもいらっしゃいますし、痛いこと苦しいことは絶対避けたいという飼い主さんもいらっしゃいます。

みくちゃんの飼い主さんは非常に熱心で、もう一度今後についてよく話し合うことができました。

そして飼い主さんはみくちゃんが牛乳を飲んだことで、極端に言えば数日寿命が短くなることはあったとしても、自分で楽しく美味しくお水を飲んだりごはんを食べることを希望されました。

そこで色がつかない程度の牛乳を入れたお水を、少量用意し、その周りには普通のぬるま湯をあちこちおいておくということでお話がまとまりました。

 

ペットの治療に正解はありません。

しかし飼い主様が本当に悩み納得して得られた結果であれば、きっとペットちゃんにとっても良い結果になると信じています。

オオハシ
オオハシ
動物たちの快適な生活が長く続くように心から願っています
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