オオハシオニコです。
春めいてきたためか、犬たちが外に出て血気盛んに交流しているようで、最近犬同士のけんかによるケガで来院される患者さんが多いです。
本日も朝イチで連れてこられた若いビーグルくん。
昨日の夜、駐車場を散歩していたら、急にリードをつけていない(いわゆるノーリード)、放されていた柴犬に腰をガブっと咬まれてしまったそうです。
ビーグルくん、生まれて初めての経験に、かなりパニック状態になってしまったのか、飼い主さんは全くさわることができない(キャンキャン鳴いて暴れる)状態でした。
犬に咬まれた場合、また犬が噛んでしまった場合、狂犬病鑑定から管理責任での賠償問題、最近ではペット保険がカバーできたりといろいろ気になるところはあると思います。
が、今回は実際に
- 犬が犬にかまれた場合、動物病院に行くべき?
- 犬が犬にかまれた場合、動物病院に行かないとどうなるの?
- 犬が犬にかまれた場合、どんな治療をするの?
- 犬が犬にかまれた場合、治療費用はどのくらいかかるの?
について、前述のかわいそうなビーグルくんを例にとってお話します。
犬が犬にかまれた場合、動物病院に行くべき?
犬や猫はとてもヒトに近い生活をしていますが、口の中の衛生状態は比較にならないほど違っています。
また、咬む力が強く、組織のダメージが大きかったり、組織自体がかみ切られてしま
うこともあります。
見た目には大したことのない傷も、実はかなりの範囲を雑菌で汚染されてしまったいるため、時間とともに悪化してくることがほとんどです。
特に犬が嫌がって(痛がって)傷の確認を飼い主さんができない場合は、必ず早めに動物病院に行きましょう。
犬が犬にかまれた場合、動物病院に行かないとどうなるの?
くりかえしになりますが、犬の口の中にはいわゆる雑菌が多く存在しています。また、牙(きば)である犬歯による傷は、入り口が狭く奥に深い形になりやすいために、バイ菌などの汚染物質が外に排出されにくく傷の中にとどまりやすくなっています。
このため動物にかまれると傷が化膿(感染)しやすく、広い範囲に感染・炎症が及んでしまうこともめずらしくはありません。
このように犬にかまれた傷は、入院が必要になる場合もあるような、傷口が小さいと軽んじられやすいのですが、なかなか厄介な外傷です。
また犬が犬にかまれた場合、パニックになってしまった愛犬が、飼い主にかまれたところを見せないことはよくあります。
そしてそのままあきらめてしまうと、犬はたいてい一生懸命その傷をなめます。
そしてそのままよりひどくなってしまうのです。
ビーグルくんの場合、かまれたのがなかなか夜遅い時間だったので、あたりは真っ暗、その場ではわからず自宅に急いで帰り、咬まれたところを飼い主さんが確認しようとしたのですが、キャンキャン嫌がり、逆にかまれそうになってしまったそうです。
当院へお電話いただいたのですが、さすがに対応できない時間だったので夜間救急病院を案内するアナウンスが流れました。
そこで、じゃあ明日でいいかとなってしまったそうなのです、が。
どうやらビーグルくん一晩寝ないで一生懸命なめていたようで、次の日の朝イチで診察したときには、腰から脇腹にかけて2ヶ所くっきりと裂けてしまった傷とそしてその周りが真っ赤に腫れあがっている状態でした。
犬が犬にかまれた場合、どんな治療をするの?
《基本的なかまれた傷の治療方法》
- 傷をきれいに(洗浄、消毒、汚染された部分のとりのぞきなど)します
- 必要であれば内部に膿がたまらないように傷の入り口を切開し、膿の出口
を作ります。 - かまれた場所によって、メリットが大きいようであればに縫合することもあります。しかし、感染が見られた場合早めに抜糸します。
- 抗生剤を飲み薬や注射または点滴で処方します。
処置した部分をなめたりしないよう、何らかの方法でカバーします
というわけで、何はさておき傷の状態を把握し、それから切るなり縫うなり、何かしないといけません。
しかし相手は、昨日咬まれて、さらに一晩寝ないで傷をいじくったかなりストレスフルな状態です
さて。
どうしましょう?
さくっと全身麻酔をかけますか?
確かに傷の処置は完璧にできます。
でもお金も時間も手間もかかりますね。
局所麻酔をかけますか?
確かにそうすれば、起きたままなので終わったら終わったらすぐに帰れます。
でも、局所麻酔は歯を抜くときなようなものなので、一ヶ所ぶすっと打っておしまい、ではなくキズの周りを取り囲むように何ヵ所も刺します。
その注射が痛いですね!
ましてや真っ赤に腫れあがっている傷、なかなか麻酔が効き辛そうです。
そのときの動物の性格や状態によっていろいろと変わってきますが、
若い元気な
ビーグル
だったこのときは、麻酔なしで処置しました。
基本的にビーグルというのはテンション高く、そしてくいしんぼです。
そこで飼い主さんとも相談した結果、おやつを少しずつ与えて気分をあげながら、その間に処置することになりました。
みんなが大好き、そしてちょっとずつしか食べられないので長持ちするすぐれもの、ちゅーるをあげること3本めになる頃には、真っ赤なキズの周りは、きれいに毛が刈られ、何リットルもの水で洗われ、ちくちく縫われてバンソウコウをはられていました。
その間、ビーグルくんはしっぽをふりふり、鼻先のちゅーるに夢中でキャンとも鳴かずにがまんしてくれました。
あとは化膿がこれ以上悪化しないよう、しっかり抗生物質を飲ませてもらって、傷の状態を見せに1週間後にきてもらうことになりました
自分でなめないよう、脱げにくい洋服でカバーします。
犬が犬にかまれた場合、治療費用はどのくらいかかるの?
今回のビーグルくんは、
診察料、傷の処置料(毛刈り、洗浄、消毒)、縫合料、洋服代、お薬代で約1万円でした。
もし、なんらかの麻酔を必要とした場合はこれに、5,000~20,000円くらいは追加になるところです。
また、このこは若くて元気だったので、傷はキレイになおり、2週間後に抜糸1,000円ですみました。
しかし、もともと持病があったり、免疫力が落ちている犬の場合、入院や追加の検査等が必要となり、何倍もの金額がかかることも珍しくありません
犬が犬にかまれた場合は、救急でも動物病院にいくことをおすすめします。
本日は以上です。