オオハシオニコです。
マンゴーはお好きですか?
独特の香りと味、猫で好きという子はまだ見たことがありませんが、犬は大好きなこが多いです。
そこで気になってくるのか、たまにきかれるのが
結論から言うと
普通の犬とマンゴーアレルギーの犬は、まったく別です。
以前ホタテ好きの猫のところでも言いましたように、普通の人(食べ物アレルギーのない人)と卵アレルギーの人に、「オムレツ食べても大丈夫ですか?」ときくのと同じくらい次元が違います。
したがって
- 普通の犬にマンゴーをあげる場合
- 花粉および食物アレルギーをもつ犬にマンゴーをあげる場合
順番について解説します。
自分の愛犬がアレルギーを持っているかわからない場合は、アレルギーかもしれない?くらいな気持ちで慎重にマンゴーにチャレンジしてほしいので②を読んでください。
犬にマンゴーをあげたいのはなぜ?
最近15歳を超えるわんちゃん増えてきていますね。
先日いらしたリリーちゃんも、恐らくは18歳です。
軽度の腎不全と認知症、そして慢性的な歯の汚れからくる鼻腔炎がありますが、あとはだいたい安定しています。
鼻腔炎の炎症悪化を防くための抗生物質の投薬と、腎不全を少しでも進行を遅らせるサプリメントを使っているのですが、5月の異常な暑さで疲れてしまったのか、食欲が落ちてしまいました。
飼い主さんは心配になっていろいろ工夫してみたそうなんですが、意外なものが気に入ったようでちょっと心配になっているそうです。
きっと、食べごろの、匂いも甘くておいしそうなマンゴーだったのかもしれませんね。
しかし、マンゴーを食べるとそんな大変なことが犬に起きてしまうのでしょうか?
普通の犬にマンゴーを食べさせると大変なことが起きてしまう?
そもそもマンゴーとは?
ムクロジ目ウルシ科マンゴー属の常緑樹で、何千種類もあるといわれています。古くからインドで栽培されており、他の国に広がったといわれています。
マンゴーはウルシ科の木になる果実なので、ウルシオールというかぶれやすい成分をもっています。そのため人アレルギーが出やすい果物であるので注意が必要です。
しかし、「果実の女王」といわれるマンゴーの味はとても美味しく、生の果肉がそのままスイーツと言われることもあります。
日本国内に出回っているものは、フィリピンなど、東南アジアから輸入されている「ペリカンマンゴー」などと呼ばれているカラバオマンゴー(マニラスーパー)と、主にタイから入ってくる一回り大きなタイプ、それにメキシコやブラジルなどから輸入されていてる「アップルマンゴー」、さらに国内でも栽培されている「アーウィン種」などがあります。
マンゴーはビタミンCやカリウムを豊富に含んでいます。
また完全に熟し、濃い黄色になった果肉にはベータカロテンが含まれています(ちなみに、まだ青いうちはビタミンCの含有量が多く、よく熟すほどベータカロテンの量が増えます)。
マンゴーを食べると起こる大変なこと
先述したようにマンゴーはウルシ科の植物で、果皮にはウルシオールというウルシ成分を含んでいます。食べなくても、皮をむいたり切ったりするだけでかゆみが出たり、かぶれたりする場合があるので注意が必要です。
普通の犬にマンゴーをあげるとき注意することは?
日本ではマンゴーと言えばあの黄色く熟した甘いフルーツの状態を想像することがほとんどです。
しかし、世界ではまだ青い、グリーンマンゴーも漬物やサラダにして食べる身近な食材です。
そのためまだ熟していないから毒性がある!みたいな、青梅や青柿のようなことはありません。
しかし、飼い主である私たちがあまりなじみのない状態のものを、犬に好きだからとたくさんあげてしまうのはちょっと待ってください。だって全然想像つかないですよね、たくさん食べるとどうなるのか・・・。
また犬は、一日分の食事を一度にとれてしまう胃袋をもっています。
喜んで食べるからと好きなだけ好きなものを与えるのは、自分でブレーキをかけることのできないわんちゃんの食欲には危険です。
やはり元気な犬であれば一日のカロリーの10~20%以内になるように、量を調節してあげてみましょうね。
マンゴー100g中のエネルギーは約65kcal。
甘いせいか、リンゴやなし、いちごなんかと比べると1.5~2倍の高カロリーなフルーツですね。
また食物繊維はリンゴと同じくらい豊富ですので、柔らかいから消化にいいというわけでもなさそうです。
じっさい日本では生で食べることが多いのですが、他の国ではカレーのお伴にチャッツネ(ジャムみたいな)にしたり、ドライフルーツにしたり、加工して食べることも多いようです。
食べ物アレルギーをもつ(もっているかもしれない)犬にマンゴーをあげるとき注意することは?
過去にはっきりと、マンゴーを食べたあとに吐く、震える、よだれ、口を痛がるなどの症状が出た犬に「ちょっと食べてみる?」とマンゴーを与えるのはとても危険です。
そんな機会はないと思いますが、それでもどうしてもマンゴーを与えてみたい場合は、必ず動物病院で相談の上与えてみてください。
万が一のときはアナフィラキシーショックの治療をしてもらう必要があります(しないと死んでしまうことがあります)。
アレルギーかもしれない、アレルギーかわからないけどあげてみたい場合行うのがいわゆる「食物負荷試験」です。
これはつまり、実際にその食べ物を食べさせてみて、動物の症状がでるかどうかを観察する方法です。
非常に原始的な手段ですが、食物アレルギーの診断でこれに勝るものはありません。
テストのやり方は様々です。
基本はごく少量から始めて、15-20分毎に量を増やしながら繰り返し食べていく方法が標準的です。
マンゴーは比較的アレルギーが出やすいフルーツです
理由その1 ウルシオールをもつため
↑をご参照ください
理由その2 花粉と交差反応を起こしやすいため
人の世界ではほぼスタンダードなっている、口腔内アレルギー症候群。
ある特定の果物や野菜に含まれるアレルゲン(アレルギー反応をおこすたんぱく質)の構造は、花粉のアレルゲンとなぜだか構造がよく似ています。そのため特定の果物や野菜を食べると、花粉が侵入してきたと体が勘違いし、すでに体で作られているアレルギー反応を起こすIgE抗体と反応、アレルギー症状があらわれてしまうのです。
そしてその「特定の果物」になかに、マンゴー、含まれているのですね…。
「アレルギーのない世界に行きたい」なんて・・・変わってあげたいというお母さんの気持ちが本当に辛いですね。
ちなみにこれが完全に犬にあてはまると言っているわけではありませんが、同じような反応は確認されています。
こちらは当院でも使うことのあるアレルギー検査会社の、アレルゲン交差反応の治療例です。
おやつの中止で皮膚炎が改善した一例:ブタクサ/シラカバ陽性例
両側の慢性外耳道炎
IgE検査結果でブタクサ・シラカバ陽性(ブタクサ 484** P、シラカバ 386** P)
おやつにキュウリとリンゴを食べていた
→ アレルギー検査の結果をふまえ、おやつを中止したら1ヵ月で治癒?!
交差反応:ブタクサ×ウリ科の食物(キュウリ・スイカ)
カバノキ×バラ科の果物(リンゴ・ナシ・モモ・ イチゴ)
ここまで極端な例は少ないと思いますが、マンゴーもこの交差反応をおこすフルーツのひとつなのです。
しかし、この検査会社の結果を見ると
ハンノキ × アーモンド・リンゴ・セロリ・サクランボ・ヘーゼルナッツ・パセリ・洋梨・桃
なぜだかマンゴー入っていない、というかこの検査のアレルゲン項目にいれてもらっていないようです(日本人はマンゴー食べないと思われてる?)。
よくいわれる「食物アレルギー」も「口腔アレルギー症候群」も、「特定の食物を食べると、アレルギーを発症する」という点では同じです。
しかし一般的な食物アレルギーではじんましんや湿疹、下痢など全身に症状があらわれますが、口腔アレルギー症候群の多くは、口やのどで症状があらわれ、全身に症状があらわれることは多くありません。
この違いがでる理由は、それぞれのアレルゲンです。
食物アレルギーを引き起こすことの多い、牛乳や卵、小麦などのアレルゲンは、熱や消化酵素に強いためそのまま腸から吸収されます。
一方、口腔アレルギー症候群の原因となりやすい果物や野菜のアレルゲンは消化酵素に弱く、胃や小腸といった消化器で分解されてしまうため、口や喉の直接接触した部位だけで反応が起こります。
また、熱に不安定で加熱によっても分解されるため、新鮮で生のもので症状が出やすく、加熱した果物や野菜では症状が出ないことも多くあります。
そのため
ということが言われたりするのですね。
おみやげにいただいた、高級ドライマンゴー(半割りをそのままドライにしたそうです)。
まあ、マンゴー自体そんなに大量に食べるものではないと思いますが、間違ってもたらふく食べさせてしまうようなことは避けてください(アレルギーでなくても、食べなれないものをそんなに一度にたくさん食べれば下痢くらいはするでしょう)。
リリーちゃんは、口の中がもともと荒れている(歯肉炎)なので、敏感になっていたのかもしれません。
食欲がないこが食欲がでるようなくらい大好きなのであれば、少しの間与えてみましょうかというお話になりました。
マンゴーのおかげか、だんだんとふだんのごはんを食べるようになってきて、飼い主さんも一安心されてます。
本日は以上です。