オオハシオニコです。
前回に続いて果物シリーズです。
みなさんいちごはお好きですか?
猫で好きという子はまだ見たことがありませんが、犬で好き~なこはたまにいるようです。
また、いちごはいわゆる「いちご風味」としてわんちゃんのおやつになっているものもあり、気になってくるのか、たまにきかれるのが
結論から言うと
何度も何度もしつこいですが、普通の犬といちごアレルギーの犬は、まったく別です。
以前ホタテ好きの猫のところでも言いましたように、普通の人(食べ物アレルギーのない人)と卵アレルギーの人に、「オムレツ食べても大丈夫ですか?」ときくのと同じくらい次元が違います。
したがって
- 普通の犬にいちごをあげる場合
- 花粉および食物アレルギーをもつ犬にいちごをあげる場合
順番について解説します。
自分の愛犬がアレルギーを持っているかわからない場合は、アレルギーかもしれない?くらいな気持ちで慎重にいちごにチャレンジしてほしいので②を読んでください。
犬にいちごをあげたいのはなぜ?
年始からゴールデンウィークごろまで、日本全国あちこちで行われているいちご狩り。
誰しもが一度は行ったことがあるのではないでしょうか?
そして最近ではなんとわんちゃんも一緒に楽しめるいちご狩りがあるそうなのです。
私は獣医師ですが、あまり愛犬を連れて出かけるのを楽しむタイプではないので(犬が高齢で怖がりということもありあすが、ただただ自分がめんどくさい、犬も我が家が一番のタイプで留守番を全く苦にしないです)、いちご狩りにわざわざ犬連れで行くと聞いて驚きました。
でも確かに、来院される飼い主さんの中には愛犬とあちこち旅行を楽しみ、温泉に行ったりリフトに乗ったりしているようなので、いちご狩りもそれを受け入れてくれるところがあるのであればそれはそれで楽しそうですね。
こちらのいちご農園さんは、看板犬もいて、しかもドッグランもついている?!と、かなりの犬好きな農主さんなのでしょうか。
そんないちご狩りに連れていく人たちが増えているなか、ふと心配になってきいてこられたフレンチブルドッグの飼い主さん。
ミニトマトはまああるとして、パプリカまでばりばり食べるとは、きっと、本物の食いしんぼですね。
食べごろの、匂いも甘くておいしそうないちごであれば確かに喜びすぎてちょっとおかしくなちゃうかもしれません。
しかし、いちごを食べるとそんな大変なことが犬に起きてしまうのでしょうか?
普通の犬にいちごを食べさせると大変なことが起きてしまう?
そもそもいちごとは?
いちごはバラ科の多年草の一種で、正式にはオランダイチゴ属に含まれます。
近頃いちごの産地が競うようにオリジナル品種を開発投入しているので、市場にはものすごくたくさんの品種が並んでいます。2019年4月には50品種以上が登録される、とても勢いのあるフルーツです。
色も形もさまざまのため、栄養価が品種によってかなり違いがあります。
例えば農水省のデータによると、100g当たりの平均的なビタミンC含有量は「とよのか」が54mg、「さちのか」68mg、そして「おいCベリー」の場合は87mgとかなりの開きがあるようです。
いちごを食べると起こる大変なこと
いちごに含まれる代表的栄養素としては、ビタミンC、ポリフェノール、キシリトールなどがあります。
ビタミンCは風邪の予防や疲労の回復、肌荒れなどに効果があり、またポリフェノールはその一種アントシアニンがイチゴの赤い色素成分であり、眼精疲労回復や視力回復に有効とされるほか、活性酸素を減らし、がん予防にも効果があるといわれています。
そしてキシリトールは、自然界に存在する天然の5炭糖の糖アルコールです。
多くの果実や野菜の中に含まれ、また人体でも作られます。
しかし、犬は犬、人と同じではなく、一日量を超えて延々食べていれば、いつか調子が悪くなってしまう可能性があります。
普通の犬にいちごをあげるとき注意することは?
キシリトールと犬
キシリトールに対する反応は人と犬では大きく違っています。
食べ物を食べると、消化吸収してブドウ糖として体内に取り込まれます。この時体内のブドウ糖、特に血液の中のブドウ糖の濃度(血糖)が高くなり過ぎないように、インスリンというホルモンが出て来て調節します。
人の場合はキシリトールはこのインスリンを放出させる力がありません。
しかし犬は人と逆で、キシリトールはインスリンを放出させる力がとても強いのです。
放出されたインスリンは血糖を低下させるお仕事にとりかかるので、血糖の低下による意識の低下、脱力、昏睡、けいれん、さらには肝障害をおこすことがあります。
なお、猫に対する影響は、わかっていません。
犬のキシリトールに対する報告
報告1.ビーグル犬の長期キシリトール投与試験
体重1kgあたり約1.3gのキシリトールを食事といっしょに2年間毎日食べても何の影響も出ませんでした。
投与量を体重1kgあたり約2.7g(犬の体重が10kgとすると約27g)まで増やすと肝障害を示す指標が上昇しました。
(この試験ではキシリトールといっしょに食事が与えられていました)
報告2.2006年にアメリカの犬の中毒情報センターのキシリトールの犬への毒性
8頭の犬の中毒例のうち5頭が死亡しています。この報告をした先生は体重10kgの犬で1gのキシリトールを食べた場合でも治療が必要と話しました。
この二つの報告を見ると、中毒をおこす用量はかなり個体差があるようです。
キシリトールによっておこされる低血糖はブドウ糖のもとになる食事が同時に与えられていると起こりにくいようです(逆にいうと単独でキシリトールを食べた場合、食べた量が少量でも危険だと考えられます)。
そして、いちごにどのくらいのキシリトールが含まれているのかとすると
イチゴ 362(mg/乾燥重量100g)
とはいえ、いちごは水分90%くらいあるので、乾燥重量100gであれば普通の状態のいちごだと1000g=3パック(いちごは1パック約300g)でこのくらいのキシリトールでしょうか。
10kgのわんちゃんなら、イチゴ10パックくらいでキシリトール1gですかね。
そんな食べることはないわね・・・と思いますか?、しかし犬は、一日分の食事を一度にとれてしまう胃袋をもっています。
喜んで食べるからと好きなだけ好きなものを与えるのは、自分でブレーキをかけることのできないわんちゃんの食欲には危険です。
やはり元気な犬であってもいちご食べ放題の状態にしてしまえば、危険な量?かもしれないいちごをぺろりと食べてしまうことはあるかもしれません、ちゃんと量を調節してあげましょうね。
(と言いつつ、冷静なことを言えばキシリトールうんぬんよりそんなに食べものを大量摂取することで胃拡張とかほかの問題が先に出ると思います。)
食べ物アレルギーをもつ(もっているかもしれない)犬にいちごをあげるとき注意することは?
過去にはっきりと、いちごを食べたあとに吐く、震える、よだれ、口を痛がるなどの症状が出た犬に「ちょっと食べてみる?」といちごを与えるのはとても危険です。
そんな機会はないと思いますが、それでもどうしてもいちごを与えてみたい場合は、必ず動物病院で相談の上与えてみてください。
万が一のときはアナフィラキシーショックの治療をしてもらう必要があります(しないと死んでしまうことがあります)。
アレルギーかもしれない、アレルギーかわからないけどあげてみたい場合行うのがいわゆる「食物負荷試験」です。
これはつまり、実際にその食べ物を食べさせてみて、動物の症状がでるかどうかを観察する方法です。
非常に原始的な手段ですが、食物アレルギーの診断でこれに勝るものはありません。
テストのやり方は様々です。
基本はごく少量から始めて、15-20分毎に量を増やしながら繰り返し食べていく方法が標準的です。
いちごはアレルギーが出ることもあるフルーツです
花粉と交差反応を起こしやすいため
人の世界ではほぼスタンダードなっている、口腔内アレルギー症候群。
ある特定の果物や野菜に含まれるアレルゲン(アレルギー反応をおこすたんぱく質)の構造は、花粉のアレルゲンとなぜだか構造がよく似ています。そのため特定の果物や野菜を食べると、花粉が侵入してきたと体が勘違いし、すでに体で作られているアレルギー反応を起こすIgE抗体と反応、アレルギー症状があらわれてしまうのです。
そしてその「特定の果物」になかに、いちご、含まれているのですね…。
「アレルギーのない世界に行きたい」なんて・・・変わってあげたいというお母さんの気持ちが本当に辛いですね。
ちなみにこれが完全に犬にあてはまると言っているわけではありませんが、同じような反応は確認されています。
こちらは当院でも使うことのあるアレルギー検査会社の、アレルゲン交差反応の治療例です。
おやつの中止で皮膚炎が改善した一例:ブタクサ/シラカバ陽性例
両側の慢性外耳道炎
IgE検査結果でブタクサ・シラカバ陽性(ブタクサ 484** P、シラカバ 386** P)
おやつにキュウリとリンゴを食べていた
→ アレルギー検査の結果をふまえ、おやつを中止したら1ヵ月で治癒?!
交差反応:ブタクサ×ウリ科の食物(キュウリ・スイカ)
カバノキ×バラ科の果物(リンゴ・ナシ・モモ・ イチゴ)
ここまで極端な例は少ないと思いますが、いちごもこの交差反応をおこすフルーツのひとつなのです。
結局イチゴアレルギーだとどうなるの?
よくいわれる「食物アレルギー」も「口腔アレルギー症候群」も、「特定の食物を食べると、アレルギーを発症する」という点では同じです。
しかし一般的な食物アレルギーではじんましんや湿疹、下痢など全身に症状があらわれますが、口腔アレルギー症候群の多くは、口やのどで症状があらわれ、全身に症状があらわれることは多くありません。
この違いがでる理由は、それぞれのアレルゲンです。
食物アレルギーを引き起こすことの多い、牛乳や卵、小麦などのアレルゲンは、熱や消化酵素に強いためそのまま腸から吸収されます。
一方、口腔アレルギー症候群の原因となりやすい果物や野菜のアレルゲンは消化酵素に弱く、胃や小腸といった消化器で分解されてしまうため、口や喉の直接接触した部位だけで反応が起こります。
また、熱に不安定で加熱によっても分解されるため、新鮮で生のもので症状が出やすく、加熱した果物や野菜では症状が出ないことも多くあります。
そのため
ということが言われたりするのですね。
まあ、イチゴ自体普通はそんなに大量に食べるものではないと思いますが、イチゴ狩りでたらふく食べさせてしまうようなことは避けてください(アレルギーでなくても、食べなれないものをそんなに一度にたくさん食べれば下痢くらいはするでしょう)。
本日は以上です。