秋の訪れとともに体調の落ち着いた子も調子を崩した子も、両方診る毎日を過ごしております獣医師のオオハシオニコです。
今日初めて診察に来てくれたミニチュアダックスちゃんは、「肝臓の薬」のことでご相談にいらっしゃいました。
しかも最近は数値が下がらなくなってしまって、先生に相談したところ「肝臓の薬を追加しましょう」と言われました。でもその薬、よく見るとサプリメントみたいなんです。
肝臓の状態が悪いのにサプリメントって間違いじゃないかと思うんですが、ずっとお世話になってた先生なのできくこともできません。ずっと飲んでいる肝臓の薬もきいてないみたいだし。
これってどうなんでしょうか
逆の見方をすれば
「その薬を飲んでいることで肝臓が10年以上も長持ちしてる」
と考えることもできますが、今回はその後相談ではありません。
飼い主様が一番気にしてらっしゃるのは薬と言われてサプリメントを出されているのが間違いじゃないかということのようです。
同じようなことをたまに聞かれることがあります。
肝臓が悪いというのは犬でも猫でもよく言われることですが、実際肝臓の薬というのは何なのでしょうか?
犬猫の肝臓の薬はありません
肝臓と言えば人では肝炎が有名ですね。
人の肝炎はほとんどがウイルス性疾患によるものです。 C 型 B 型最近ではもっと新しい型も増えてきており、ものによってはワクチンも作られているほどです。
ウイルス性肝炎の場合そのタイプによって薬があり、それをいくつか組み合わせたり状況によっては免疫抑制剤などを使うことで治療をします。
しかし犬や猫の場合ウイルス性の肝炎は一般的ではありません。
肝炎というよりも肝臓の機能不全つまり何らかの原因で肝臓の機能が落ちている、それを総称して肝臓が悪い、肝不全であると言われることがほとんどです。
それを根本から治す薬というのはほぼ存在せず、その症状を緩和する改善させるお薬が治療に使われます。
犬猫の肝臓の薬その1ウルソ
人でもよく定番で使われる、肝臓で作られる消化液、胆汁酸の1成分からできているウルソデオキシコール酸です。
これを飲むことでその動物の胆汁内のウルソ酸の比率を上げると、肝酵素が改善することが分かっています。
このように胆汁を上手く流す利胆作用の他に、免疫を調節する作用また発ガン抑制効果もあると言われています。
犬猫の肝臓の薬その2グリチルリチン
これもいわゆる漢方、生薬の甘草マメ科から抽出された成分であり、肝臓の炎症を抑えるまたは発がん抑制効果があると言われています。ウルソよりも副作用が少ないため長期間にわたってこれだけを飲み続けている動物は結構います。
犬猫の肝臓の薬その3ステロイドホルモン
肝炎でなくても肝臓が炎症を起こすことはあります。
その一つが自己免疫疾患、いわゆる自分で自分に起こすアレルギー様症状です。
この炎症反応によって肝臓が繊維化、硬くなってしまい本来の機能が失われたり、そのまま進行して肝硬変といった回復不可能な状態になってしまうことがあります。
それを抑えるのがいわゆるステロイドと呼ばれる副腎皮質ホルモンなどです。
ステロイドは肝臓に悪いと一般的には信じられていますが、そうではなく治療にとても有効な場合もあります。
犬猫の肝臓の薬その4対症療法薬
肝臓か悪い状態が続き、肝硬変にまで及んでしまった場合は治す治療ではなくその症状を抑える対症療法が中心となります。
緩下剤
肝機能不全によるアンモニア血症、血液中に神経症状を起こすアンモニアか溜まってしまう状態にならないように使います
アミノ酸
脳を保護し、肝臓癌のリスクを減らす、特定のアミノ酸を選んで使います。
利尿剤
腹水が溜まりにくいように処理しきれない水分を尿に出しやすくします。
消化器薬
肝硬変による吐き気、むかつき、食欲減退、胃酸過多などを防ぎます。
ざっとあげるとこんな感じですが、その他にも胆嚢のための薬や黄疸対策の薬など、いろいろ使っている獣医師もいらっしゃいます。
肝炎はともかく、肝機能不全であれば飼い主さんが「薬」としては認めづらいものもあるかもしれません。
疑問に思ったり不安に感じられることは早めにおたずねになっていただくのが1番です。ペットのよりよい治療のため、ぜひ納得のできる治療を行ってくださいね。
本日は以上です。